「ウクライナは感謝しろ」声荒らげるトランプ氏、会談は険悪 「力による平和」に危うさ

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【ワシントン=大内清】2月28日に行われたトランプ米大統領とウクライナのゼレンスキー大統領の会談は、同席したバンス米副大統領の一言で険悪なものに急転した。ロシアがウクライナ南部クリミア半島を一方的に併合した2014年以降の経緯から「安全の保証」の必要性を説明しようとするゼレンスキー氏を、「ここでそんな話は無礼だ」「(トランプ)大統領に感謝の言葉はないのか」となじった。

ゼレンスキー氏は会談冒頭で複数回、トランプ氏への感謝の意を表明している。

「一度ウクライナに来てほしい」。こう訴えるゼレンスキー氏にバンス氏は「あなたは(同国を訪問する者を)プロパガンダ(政治宣伝)ツアーに連れ歩いている」とも主張した。

ゼレンスキー氏がロシアの脅威や再侵略のリスクを説明しようとすると、今度はトランプ氏が「われわれ(米国が)どのように感じるべきかを押し付けるな」「ウクライナは感謝しろ」と声を荒らげた。ゼレンスキー氏のことを「停戦を拒否している」と決めつけ、「兵士の命や第三次世界大戦(の危険性)でギャンブルをしている」と非難。ロシアが停戦を破った場合はどう対処するのかとの記者団の質問には「知るか」と答え、プーチン氏との良好な関係を強調することに終始した。

トランプ氏は自身の外交方針に「力による平和」を掲げる。旧ソ連との冷戦を終結に導いたレーガン元大統領をはじめとした歴代政権が、米主導の国際秩序を形容するのに用いてきたスローガンだ。

だが、この日の「公開口論」で露呈したのは、一方的な現状変更を認めないとの基本原則や、そのために同盟・友好国を重視する姿勢などではなく、十分な事前調整もなしに強引にディール(取引)を迫る姿だった。

今回決裂したウクライナの鉱物資源を巡る協議は元々、ゼレンスキー氏が昨年9月にトランプ氏と面会し提示した案とされる。露軍の侵攻を受けるウクライナ東部に多い資源の開発を材料に、米国とより長期的な信頼関係を築く狙いがある。これに対しトランプ氏は、足もとを見るように「ゼレンスキー氏には交渉カードがない」とし、ウクライナや欧州が求める「安全の保証」への関与に消極的な態度を崩さなかった。

安全保障の専門家らの間では、米国がロシアに宥和的な姿勢をみせることは、中国などの現状変更勢力を喜ばせることにつながるとの見方が強い。ブッシュ(息子)元政権で大統領次席補佐官を務めたカール・ローブ氏は28日、FOXニュースのインタビューで、両首脳の口論での「唯一の勝者はプーチン氏だ」と嘆いた。

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